わ、私の名前…!


しかも、フルネームで…!!


水を得た魚のように、心臓がドクンと跳ねる。


「忘れたって嘘!?覚えてくれてたの?」


「不良に絡まれた翌日に、朝から迷子になって高校にも行けないヤツなんて、インパクト有りすぎだろ。忘れたくても忘れられねぇよ」


あ、なるほど…。


悪い意味で忘れない的な感じか…。


苦笑いすると、壱夜くんは溜め息を零した。


「碧瀬って、本当に変なヤツ。大抵の女は、俺と話すことすら嫌がるのに」


そうなの…?


ちょっと信じられない…。


多少…毒舌なところはあるけど、優しい人だから、女の子からも結構話しかけられてるんじゃないかと思ってた。


でも、違うのかな…。


「私は、壱夜くんと話せるの嬉しいよ!」


「俺は嬉しいっていうより、鬱陶しいけど」


「そ、そうだよね…。今度から大声は出さないように気を付けます…」


周りの迷惑にもなるし。


反省していると、壱夜くんはフッと鼻で笑った。