「相変わらず声がデカい。鼓膜が破れるかと思ったじゃねぇか」


「ご、ごめん。ビックリして、つい反射的に叫んじゃった」


「ったく、周りにも迷惑なんだから気を付けろよ」


ハッとして目を左右に動かせば、何事かと言わんばかりの驚いた顔で私を見ているクラスの子たちが何人もいて…


恥ずかしくなった私は、静かに席に座って肩をすくめた。


「言っとくけど、普通に呼びかけても応答しないし、定規やノートで腕を軽くつついたり、机を少し揺らしてみても反応しないお前が悪いんだからな?」


「うっ、すみません」


そんなに色々とやってたのか…。


全然気付かなかった。


「放置して帰ろうかと思ったけど、そんなことしたら暗くなるまで教室に居そうな雰囲気だったし。最近、学校周辺で不審者出没の情報もあるんだから用心しろよ」


「心配してくれて、ありがとう」


「俺は、警戒心が欠如しているお前に注意しただけ」


こういう優しさ、壱夜くんらしいな。


素っ気ない口振りの壱夜くんに、頬が緩んだ。