ごめんね、お父さん。


これからは辛い時や悲しい時に、感情に蓋をしないようにする。


泣きたくなったら、我慢せずに泣くね。


心の声で語りかけると、空が優しく笑ったような気がした。


「それじゃあ、そろそろ帰るね」


壱夜くんが淹れてくれたコーヒーを飲んだ後、私は帰り支度をしてリビングを出た。


「一人で大丈夫か?」


「うん、大丈夫。色々とありがとう」


「別に礼を言われるようなことは何もしてねぇよ」


いつものお決まりの返答にクスッと笑みが零れてしまう。


「また来週、学校で!壱夜くん、今日はゆっくり寝てね」


「はいはい。気を付けて帰れよ?」


「うん!」


大きな欠伸をする壱夜くんに手を振って家を出た。


昨日のどしゃ降りが嘘みたい。


本当、いい天気…。


爽やかな春風が頬を撫でる中、ゆっくりと歩き始めた。


“俺も…お前の力になりたい”


不意に、昨日の壱夜くんの言葉が頭の中で再生される。


私は口元を緩めながら、胸元に手をあてた。