「自分のこと、大事にしろよ」


眠ってる人間に呟いても届かないけど。


まあ、起きてる時に言ったところで、コイツの他人優先主義は変わらないだろうな。


「………」


……って、なんで莉彩の寝顔を凝視してんだ俺は。


小さく咳払いしながら慌てて立ち上がった。


毛布でも持ってくるか。


このままじゃ肌寒いだろうし。


物音をたてないようにリビングを出たタイミングでポケットに入れていたスマホのバイブが震えた。


「もしもし?」


『悪いな、夜遅くに。壱夜、寝てた?』


「いや、いつも起きてる時間だから。んで、どうしたんだよ、桃舞」


『な~んか珍しく眠れなくてさ。壱夜と他愛ない話でもしてたら眠くなるかと思って』


「どういう理論だよ、それ」


余計に目が冴えるんじゃねぇか?


苦笑いしていると、電話の向こうから“あれ?”と不思議そうな桃舞の声が聞こえてきた。


『今日って、壱夜のお父さんかお母さんが居るのか?』


「どっちも居ねぇけど、なんで?」


『お前、さっきから小声で話してるから。家に一人だったら普通のボリュームで話すだろ?』


「……」


何気に着眼点が鋭い…。