「い、壱夜くん!?」


「こうすれば、俺には見えない」


「えっ…」


「泣きたい時は、ちゃんと泣け」


ポンポンと頭を撫でる手も、声も優しい。


「でも、壱夜くんの服が濡れちゃうから」


「ったく、んなこと気にすんな。俺は大丈夫だから」


「ありがとう」


私は壱夜くんの胸に顔を埋めると、声を上げて泣いた。


泣いても泣いても、涙は止まることなく頬を濡らす。


「お父さん、ごめんね…」


時折、声を震わせて呟くと、壱夜くんは何も言わずに頭を撫でてくれた。


大きな手で、ゆっくりと何度も。


その温かい優しさに包まれながら零れ落ちていく涙は、収まる気配が全く無くて…。


雨音が響く室内で、私はずっと泣き続けていた。