「俺も桃舞も、あの日“赤髪の男との遭遇を回避することが出来たんじゃないか“って、お互い自分自身の言動を責め続けてきた。だけど俺たちに“何事もなく進むはずだった時間に、不測の事態が飛び込んできただけ”って言ってくれたのは、お前じゃん」


「それはそうだけど……」


「事故を予想出来てたにも関わらず、わざと酷いことを言ったっていうなら話は別だけど、そういうわけじゃないだろ?」


頷くと、壱夜くんの手が私の手の上に静かにのせられた。


「それに、この事故の原因が莉彩の言葉だなんて、お前のお父さんは絶対に思ってねぇよ」


「………」


「莉彩に“元に戻してよ”って言われたからスノードームを買いに行こうとしたんじゃない。お前の笑顔が見たかったから、会社を定時退社して店に行こうとしたんだ。だから、そんなに自分自身を責めんな」


その言葉を聞いた途端、心にずっと張られていた糸がプツンと切れたような感覚がして…


「あっ…」


涙の粒が次から次へと頬をつたっていくのが分かった。


「ご、ごめんっ……」


流れる涙を拭おうとしていると、目の前でしゃがんでいた壱夜くんがソファーに腰を下ろす。


そして、私を腕の中に抱き寄せた。