あれは、9年前の春。
小学2年生になって、まもない日の夜のことだった。
“ガシャーン”
お風呂上がりに聞こえてきたのは、何かが割れた音。
パジャマに着替えてリビングに行ってみると、お母さんとお父さんがしゃがんで何かを片付けていて…
傍に駆けよった私は目を大きく見開いた。
『わたしの…スノードーム……』
目に映ったのは、お気に入りだったスノードームのガラスが割れて散乱してる光景。
『どうして……』
さっきまで、キッチンのテーブルの上に置いておいたのに…。
呆然と立ち尽くす私を見て、お父さんが気まずそうな表情を浮かべた。
『莉彩、ごめん。このスノードーム、お父さんが壊しちゃったんだ』
『えっ…』
『お母さんが晩ご飯の片付けしてるから、邪魔にならないようにリビングのテーブルに移動させようとしたんだけど、この棚に足を引っ掛けてバランス崩して……』
『それで落としちゃったの?』
『うん。本当にごめ……』
『ひどいよ……』
ジワリと視界が歪む。
涙が一粒、床に零れ落ちた。


