「悪い、今のは言い方がキツかった」
「ううん、別に謝らなくていいよ」
「お前が本当に家に帰るんだったら引き留めねぇけど、明らかに嘘ついてるのが分かるから。冷たい雨が降ってる夜に、外を彷徨かれても心配なだけだし」
完全にお見通しか…。
それとも、単に私が誤魔化すのが下手すぎるだけなのかな…。
唇を噛み締めると、壱夜くんの大きな手が私の頭に静かにのせられた。
「帰れるようになったら帰れ。それまでは、ここに居ろ」
命令口調なのに、声は驚くほど優しくて。
少し目頭が熱くなるのを感じながら、再びソファーへと腰を下ろした。
「莉彩」
「………何?」
ソファーには座らず、私の目の前にしゃがんだ壱夜くん。
見上げる視線は真っ直ぐ私を捉えていた。
「あのさ、余計なお世話かもしれねぇけど辛い感情や気持ちを過度に抱え込みすぎると心に毒だぞ?」
「…………」
「どうしても話したくないこともあるだろうから、無理に話せとは言わない。でも、俺は…桃舞に自分の抱えてきた本音を話せたことで、心が軽くなったし、ずっと張り詰めてた気持ちも楽になった」
あの日の空き地での光景が蘇る。
桃舞くんも壱夜くんも、最後は晴れやかな表情してたっけ…。


