初恋のキミは最愛ヒーロー


こんなこと……


壱夜くんが聞いても困るだけなのに。


私ってば、どうして話そうとしてるんだろう…。


「………莉彩?」


「あっ、えっと……ごめんね。今のは、気にしないで?」


不思議そうに名前を呼ぶ壱夜くんにニコリと笑って、慌てて立ち上がる。


「や、やっぱり私…家に帰るね!ご両親が不在とは言え、長居するのは申し訳ないから」


バッグを持って“じゃあね”と手を小さく振った後、足早にリビングを出ようとした、その時。



「ちょっと待て」


壱夜くんに腕を強く掴まれた。


「お前、どこに行くつもり?」


「だ、だから……自分の家に…」


「一人で家に居るとフラッシュバックしそうで不安だから、公園で時間を潰してたんだろ?」


「それは、まあ……。でも、意外と平気かもしれないから大丈夫だよ」


アハハ…と笑うと、壱夜くんは不機嫌そうに眉を寄せる。


「……だから、その作り笑い止めろ。無理して平静を装って誤魔化されるとイラつく」


その言葉に、上がっていた口角がスッと下がった。