初恋のキミは最愛ヒーロー


「あったかい……」


カップを強く握って、ポツリと呟く。


壱夜くんは、私と対面するソファーに腰掛けると、手に持っていたコーヒーを半分ほどまで飲んだ。


「お前、今朝からボンヤリしていて心ここにあらずな状態だったもんな。まあ…今日に限らず、ここのところ何か様子がおかしかったけど。それも、みんな同じ理由か?」


その言葉に、私は瞬きを繰り返す。


「私、いつも通りに振る舞ってたつもりだったんだけど、そんなに分かりやすかった…?」


「ああ。普段より大人しいっていうか、騒がしくないっていうか……。明らかに違うだろ」


そういう判断基準か…。


いつもと同じ自分を演じてたつもりだったんだけど、バレてたんだ…。


「あのさ、親父さん…いつ頃亡くなったんだ?」


「私が小学校低学年の時に、交通事故で…」


「そっか。事故って突然だから、ショックだよな…」


「うん。私の言葉が事故の引き金になったも同然だったから、なおさら…」


そこまで口にした時、少し困惑したように眉を寄せる壱夜くんを見て、言葉を呑み込んだ。