「莉彩」
呼ばれて振り向いた途端、白い物体が目の前に飛んでくる。
咄嗟に反応してキャッチしてみると、それはタオルだった。
「お前、少し濡れただろ。風邪ひかないように、ちゃんと拭けよ」
「あっ、ありがとう…」
濡れた…って言っても、雨が降り出してから、それほど時間が経たないうちに壱夜くんが公園に来たと思うから…
大したことないのに…。
優しい気持ちに心が温かくなるのを感じながら、髪の毛や服にポンポンとタオルをあてた。
「…っていうか、そんなところに突っ立ってないで座れば?」
「うん……」
壱夜くんに促され、窓際を離れる。
2,3人掛けの、ゆったりとしたソファーの端っこに座ると、テーブルにコーヒーの入った紺色のマグカップが静かに置かれた。
「外、少し寒かったから。これ飲めば温まるだろ」
「わざわざ淹れてくれたの…?」
「俺も飲みたかったから、ついで。こっちは砂糖とミルク。ブラックがダメなら適当に使えば?」
「ありがとう…。いただきます…」
カップの隣に置かれたスティックシュガーとポーションミルクを入れて、一口飲んだ。


