初恋のキミは最愛ヒーロー


「……入れよ」


「お、お邪魔します」


雨足が次第に強くなる中、壱夜くんの家に到着。


綺麗な一戸建ての住宅。


遠慮しながらも中に入ると、リビングへと通された。


「そのソファーに適当に座ってもらって構わないから」


「うん…」


頷くと、壱夜くんは部屋を出て行った。


座ってろ…と言われても、なんか落ち着かないな。


広いリビングをキョロキョロと見回す。


無駄なものが置かれていなくて、清潔感があって綺麗だけど、あまり生活感がない雰囲気だ。


ご両親が常に家に居るわけじゃないみたいだから、リビングもあまり使ってないのかな…。


そんなことを考えながら、テラスに面した大きな窓の傍へとやって来る。


さっきよりも暗くなった灰色の空。


勢いよく叩きつける雨。


あの日の雨も……


こんな感じの降り方だったな。


夕方から降り始めて、だんだん激しい雨になって……


キュッと唇を噛み締めた時、リビングのドアを開ける音がした。