「こんなところで座ってたら、風邪ひくだろ」
「で、でも…急にお邪魔するのは迷惑だから…」
「お前が、ここで雨に濡れて体調崩したりしたら、それこそ迷惑」
「だけど、おうちの人も困惑すると思うし……」
「俺しか居ねぇから、困惑も何もねぇよ」
「えっ…?」
「母さんは海外。父さんは、また出張中だから、月末まで帰って来ない」
そう言えば、壱夜くんのお母さんは服飾関係の仕事で海外に行ってるんだっけ。
お父さんって、確か遊園地に行った時も出張に行ってたよね…。
そっか、ご両親は不在なのか…。
でも、いきなり壱夜くんの家に行くっていうのは申し訳ない気が…
頭の中であれこれ考えていると、壱夜くんは私が肩に掛けていたスクールバッグをヒョイッと取り上げた。
「さっさと行くぞ」
モタモタするな…と言わんばかりに眉間にシワを寄せる壱夜くん。
迫力ある表情に急かされて、私は慌てて立ち上がる。
そのまま壱夜くんの傘に入って、歩き出した。


