「今日、お父さんの命日なの……」
壱夜くんは、目を見開く。
いきなり、こんなこと言われたら、驚くのも無理ないよね。
当然の反応だ。
「一人で家に居ると、あの時の光景が鮮明にフラッシュバックしそうで…。例年は、お母さんが居たから、気持ちが少し安定してたんだけど…」
「今日は、居ねぇのか?」
「うん…。出張先でトラブルがあったらしくて、今日中に帰って来れるか微妙みたいなんだ…」
「………そうか」
何か考えるように難しい顔で呟く壱夜くん。
やっぱり、話が重すぎるよね…。
唇を固く閉じて俯いた、その時…。
「……だったら、俺の家に来れば?」
えっ…?
思いも寄らない言葉に瞬きを繰り返す。
ゆっくりと顔を上げると、壱夜くんは少し気恥ずかしそうに視線を逸らした。


