混雑してたし、パレードで盛り上がっていて賑やかだったから無理もないか…。
「良かったね、壱夜くん…!」
俺の手の平にキーケースをのせた碧瀬はニコリと笑う。
「ありがと…。すげぇ感謝してる」
碧瀬が、キーケースを拾った女の子に会わなければ、もしかしたら見つからずに終わっていたかもしれない。
大切なものだから、どんなに“ありがとう”を言っても足りないぐらいだ。
「碧瀬が一緒に探してくれて良かった…。本当、ありがとな」
「そ、そんなにお礼言われると何だか照れくさいよ。でも、それだけ大事なストラップなんだね」
「ああ…」
二度と、同じようなことがないように気を付けないと。
ジーンズの前ポケットにしっかりとしまい込んだ。
「そうだ、桃舞たちに連絡しねぇと…。まだ探してるだろうから」
スマホを取り出して電話をしようとした俺は、ふと違和感を感じて碧瀬に視線を向けた。
「そう言えば、お前…さっきから左手を背中の後ろに回したままでいるの、なんで?」