『お母さーん、どこー?』


母さんを探して歩き回るものの、声は賑わう人混みに掻き消されて、誰も見向きもしない。


完全な迷子状態。


このまま家に帰れなかったら、どうしよう…。


俯いた途端、心の中が不安で埋め尽くされた。


咳も増えてきた上に、喉まで痛くなってくる始末。


こんなことになるなら、ちゃんと母さんの傍に居ればよかった…と後悔していた、その時だった。


『おい、邪魔なんだけど』


突如…降ってきた、煙たがるような低い声。


顔を上げると、目の前に柄の悪そうな二人の男が立っていた。


一人は中学生ぐらいで、もう一人は高校生ぐらいだろうか。


鋭い眼光で見下ろされた俺は、肩をすくめた。


『聞こえねぇのか?邪魔だって言っただろ』


『棒みたいに突っ立ってんじゃねぇ。退けよ』


その荒々しい言葉を放った直後、高校生らしき男に強く突き飛ばされた俺は、地面に勢いよく倒れた。