【壱夜side】


「ねぇ、壱夜くん!さっきのパレードを見たのって、この辺りだったよね?」


「そうだな」


「……となると、この周辺に落ちてるかもしれないね」


パレード会場に戻って来た俺たち。


碧瀬は、しゃがんだ状態で足を進めながらキーケースを探し始める。


“何をしてるんだろう”と言わんばかりに怪しげな表情を浮かべて行き交う人たちの視線なんて、全く気にせずに。


ったく、お前が無くしたわけじゃねぇんだから、そんなに一生懸命になることねぇのに。


でも、その優しさは…素直に嬉しい。


真剣な表情で探す碧瀬の姿に、心が温かくなった。


俺も、早く探し始めよう。


みんなの遊園地で遊ぶための貴重な時間を割いてるわけだし。


地面をひたすら見ながら、キーケースがないかどうか確認していく。


しっかりポケットに入れておいたはずなのに、落としちまうなんて不覚だ。


ギュッと拳を握り締めた。


何としてでも見つけねぇと…。


ストラップのガラスボトルの中には、初めて好きになった女の子から貰った、宝物が入っているんだから。