「……ったく、コイツが余計なこと広めたりするから。俺は拒否したのに」


不満げな声に、玲音くんは涼しい顔で聞き流す。


心なしか、口元が緩んでいるように感じた。


「まあまあ、壱夜。別に悪い噂を流されてるわけじゃねぇんだから怒るなって!俺は、壱夜の印象が良い方向に変わってきていること、すごく嬉しいぜ?」


「私も嬉しい!」


ニカッと屈託のない笑顔の桃舞くんに賛同する。


「だって、壱夜くんの魅力は私たちだけじゃなく、色んな人に知って貰いた…………わっ!?」


力強く話していた時。


ちょうどカーブを通過したらしく、車体が大きく揺れる。


どこにも掴まっていなかった私は、バランスを崩して前のめりに。


そのまま壱夜くんの胸の中に飛び込んでしまった。


「何やってんだよ、危ねぇだろうが」


「ご、ごめん」


「一歩間違えればケガしてたかもしれねぇんだぞ?気を付けろ」


「うん…」


降ってくる声に小さく頷いた。