「うるせぇな。なんで、そんなデカい声を出すんだよ」


不快感を滲ませながら両手で耳を塞ぐヨルさんに、頭を下げる。


「すみません、ついビックリしてしまって…。貫禄があるというか、落ち着いてる雰囲気なので、てっきり年上なのかと…」


「どうりで、喋り方が堅苦しかったわけだ」


「今後は、気を付けます…」


同い年で敬語だと、よそよそしく感じるもんね…。


「“今後”って言っても、この先…アンタと話す機会があるか分からねぇけど?」


「話す機会が無ければ作ります!私、もっとヨルさんとお喋りしてみたいと思っていますので…」


「言ってるそばから、もう敬語になってんじゃん」


あっ、しまった…。


慌てて口を覆うと、ヨルさんは小さな溜め息を零す。


「変なヤツ」


そう皮肉っぽく呟くと、先に行ってしまった。


あっという間だったな、ヨルさんと居る時間。


終わった途端に感じる、この不思議な余韻と喪失感は何なんだろう…?


未知の気持ちに首を傾げた。