「そうだ、碧瀬……携帯持ってるか?」


「うん」


「ちょっと貸して?」


壱夜くんに促されて、コートのポケットに入れていたスマホを渡す。


どうしたんだろう…?


時間の確認をしたかったとか?


不思議に思っていたのも束の間、すぐに私の手のひらにスマホがのせられる。


画面を見ると、なぜか発信履歴の一覧が表示されていた。


「えっと、これは……」


「今、俺の携帯に電話した」


「もしかして、どこかに落としたの?早く探さなきゃ」


「違ぇよ、バカ。そうじゃなくて…」


少し苛立ったような声で話す壱夜くんは、クシャクシャと頭を掻いた。


「一番上の番号、俺のだから登録しとけ。俺も家に帰ったら、お前の番号を登録しとくから」


えっ…


それって……


「も、もしかして……番号交換ってこと?」


「お前、危険な場面に巻き込まれやすいだろ。だから、何かあった時に、助けを求められる体制を整えておいた方がいいと思っただけだ」


素っ気ない口振りだったけど、私を心配してくれてる壱夜くんの優しさに、笑みが溢れた。