「今まで流してた黒河内の色んな噂話、あれは俺の勘違いだったって、みんなに広めとく。本当は優しさと強さを兼ね備えたカッコ良いヤツだ…って、今度は言うから」


「そんなこと広めなくていい。俺は……」


「迷惑かけて悪かったな」


紅月くんは少し頭を下げた後、神楽くんと一緒に空き地を出て行った。


「……ったく、最後まで話を聞けよ。俺は今の状態のままでいいのに。余計なことを周りに話さないで欲しいんだけど」


「私は、壱夜くんの良さが周りに広まっていったら嬉しいな。デタラメな噂は聞くだけで不快だもの」


「何も、お前が不快になる必要ねぇだろ」


「私だけじゃないよ。きっと神楽くんだって…」


“同じように感じてるはず”


そう言おうとしたところで、壱夜くんから大きなクシャミが。


「もしかして、治りかけの風邪が悪化したんじゃない!?私は一人で帰るから、壱夜くんは早く家に帰って休んだ方がいいよ」


病み上がりも、油断すると風邪をぶり返しちゃうし…。


慌てる私の額に、壱夜くんはデコピンをした。