「さてと、俺らも帰ろうぜ」


「そうだな」


笑顔の神楽くんに対して、小さく頷いた壱夜くん。


私は、紅月くんへと視線を向けた。


肩を落として俯く姿は、とても悲しげで。


普段、学校で見かけるようなキラキラした爽やかな王子様の面影はない。


「あ、あの……紅月くんも帰ろ?」


人を寄せつけないオーラを感じつつも、思い切って声を掛けてみると、不快そうに睨まれた。


「……アンタたちだけで、さっさと帰れよ」


「えっ…」


「俺には、帰る家なんかない」


低く呟かれた声に、私よりも先に神楽くんが少し戸惑いながら反応する。


「何言ってんだよ。お前、隣町にある総合病院の院長の息子なんだろ?病院の傍に立派な豪邸が……」


「あんなの、俺ん家じゃねぇよ!それに、あの院長は…俺の本当の父親じゃない!」


「「えっ…」」


空き地に響く、怒りを露わにした荒々しい声。


私と神楽くんの驚きを含んだ声が重なった。