「そうだったのか…」


「ああ。だから、桃舞は何も悪くな…」


「だったら、壱夜だって同じだろ?」


「えっ…?」


「お前だって、俺を外に連れ出そうとしてワザと忘れ物をしたってわけじゃないだろ。それに、忘れ物は翌日に学校で返すっていう選択肢だってあった。それをせずに追いかけたのは俺の意思。だから、壱夜に過失なんてないんだよ」


優しい声に言葉を詰まらせていると、一瞬…桃舞は碧瀬に視線を向けた。


「俺、昨日……あの夜の出来事を莉彩ちゃんに打ち明けたんだけどさ、その時に“悪いのは、身勝手な理由で攻撃をしてきた赤髪の男”だってハッキリと断言された」


碧瀬を見ると、恥ずかしそうに目を逸らした。


「そのあと、”何事もなく進むはずだった時間に、不測の事態が飛び込んできただけ”って言われて、心が少し軽くなったんだ。確かにその通りだな…って納得してる自分がいた」


冷たい風が俺たちの髪を揺らす。


桃舞の表情が心なしか穏やかになっていた。