神楽くんが、ポツリポツリと当時の出来事を話し始めた。


「あの日の学校帰り、壱夜が俺の家に寄ったんだ。友達になってから、アイツが俺の家に遊びに来てくれたのは初めてだったし、すげぇ嬉しかった」


そう言って、懐かしそうに目を細める。


「ゲームしたり、漫画読んだり、夕飯も一緒に食べて、また遊んで…。時間なんてあっという間に過ぎてさ、気付けば夜の9時を回ってたんだ」


それだけ楽しい時間だったってことだよね。


神楽くんの話に頷く。


「そろそろ帰る…って壱夜が言って、玄関先で見送った。だけど、自分の部屋に戻ってきて少し経った頃に、アイツがシャーペンを置き忘れてることに気付いたんだ。それで、俺は壱夜の後を追いかけて家を出たんだけど…」


「……その時に何かあったの?」


「うん。その途中、電車の高架下を通り抜けたところで左の道から歩いてきた人とぶつかりそうになったんだ。それが、黒いメッシュを入れた赤髪の男だった」


ドクン…と心臓が嫌な音をたてる。


神楽くんの表情は、途端に険しくなった。