「どうせ俺が話さなかったとしても、コイツが代わりに説明するだろうし。だったら、いちいち隠すのも面倒だと思ったんだよ」


そういう理由だったのか…。


壱夜くんから冷ややかな視線を向けられた神楽くんは、不満げに頬を膨らませる。


「失礼な、俺はそんなに口軽くねぇよ。つーか、母親からの電話がきた時、なんで曇った表情してたんだよ」


「昨日の夜も電話がきて、新しいプロジェクトの話を2時間ぐらい延々と聞かされたのに、今日…また電話を掛けてきたから憂鬱になっただけ。昨日は、長電話のせいで、なかなか寝付けなかったから寝不足だし」


もしかして、夜の長電話からの寝不足が風邪をひいた原因なのでは…?


クシャミをする壱夜くんに、ポケットティッシュを差し出した。


「風邪も重症化すると大変だし、ゆっくり休息をとった方がいいよ」


「余計なお世話なんだけど」


「大事な友達が体調不良なんだから、心配するのは当然だよ。ねっ、神楽くん!」


「そういうこと!ほら、教室に戻るぞ?」


壱夜くんの背中を二人でグイグイ押すと、盛大な溜め息が返ってきた。