「…ったく、紅月の心配する前に自分の身の安全を心配しろ。お前、危機感ってもんが足りねぇんだよ」


「す、すみません…」


肩をすくめると、壱夜くんはチラリと後ろを振り返った。


「さっき、お前が居た場所からカーブミラーが見えただろ?」


「うん…」


「あの手前を曲がると錆びた古い倉庫がある。そこを、一つの不良グループが溜まり場として使ってるんだ」


「紅月くんたちが歩いて行った方向と同じ…。そ、それじゃあ……」


「やっぱり、アイツ…裏の顔を持ってたみたいだな」


“紅月が纏う空気は、穏やかじゃない”


そっか…。


あの時、壱夜くんは既に見抜いてたんだ。


王子様に隠された、もう一つの顔を。


「ねぇ、壱夜くん。その不良グループと、過去に何か揉めたりとかした…?」


「何だよ、突然」


「紅月くんと初めて話をした時に、壱夜くんに大切なものを奪われた…的なことを、彼が言ってたから」


壱夜くんは少し沈黙した後、眉間にシワを寄せた。