「……空手」


「壱夜くんが空手だなんて、カッコいい!カッコ良すぎるよ」


空手着姿、素敵だろうな…。


想像するだけでも、ドキッとしてしまう。


「お前、今…変な妄想してんだろ?」


「えっ!?べべっ、別に健全な想像を膨らませてただけだよ」


顔を覗き込まれた私は、動揺して視線を泳がせた。


「つーか、今度は俺の質問に答えろ」


「えっ…?」


「どうして、さっきの場所に居た?」


や、やっぱり…そこを突いてきますよね。


ジーッと睨まれるような視線を注がれた私は、おそるおそる口を開く。


「じ、実は駅前で紅月くんを見かけまして…。不良らしき男の子と、一晩中遊ぶ…みたいな話をしてるのを聞いたので、心配になって後を追いかけました…」


理由を正直に伝えると、盛大な溜め息が返ってきた。


「……そんなことだろうと思った。いくら方向音痴気味な碧瀬でも、迷って入り込むような場所じゃねぇから」


確かに…。


引っ越してきたばかりなら分からないけど、もう一ヶ月以上は経った。


さすがに駅前で迷子にはならないや…。