「遅ぇんだよ、お前」


紅月くんは少しイライラした様子で顔を上げる。


「わりぃ、後輩からカネ巻き上げてたら遅くなっちまってさ」


ニヤニヤと笑って駆け寄ってきた男の子。


黒っぽいメッシュ入れた明るい金髪、派手なピアスをつけた耳、背中に刺繍が入った黒い上下のジャージ。


同世代ぐらいだろうか…。


誰だか知らないけど、あの格好といい、漂わせてる雰囲気といい、どう見ても不良だ。


「んで、玲音…今日はどうする?」


「ゲーセンで遊んで一晩中カラオケ」


「おっ、いいじゃん。んじゃ、ケイタたちにも声掛けようぜ?いつもの場所にたむろしてるだろうから」


「ああ、そうだな」


立ち上がった紅月くんは、さっき私が歩いてきた方向へと歩き出した。


どうして、不良と一緒に遊んでるの…?


一晩中、ゲーセンやカラオケで遊ぶ…って本当に?


戸惑いながら、少しずつ遠ざかっていく後ろ姿を見つめる。


頭の中には、この前の壱夜くんの忠告が再生されていた。