あれ…?


この香りは、確か……。


ゆっくり振り向くと、噴水の周りに置かれたベンチに座ってる見知った男の子が目に飛び込んできた。


やっぱり、紅月くんだ…。


黒いニット帽を深めに被り、襟や袖口に赤いラインの入った黒のスカジャン、そしてジーンズを履いている。


耳元には、複数のピアス。


俯き加減でスマホをいじってる彼は、私の存在に気付いていない。


なんだか、学校で見る姿とは雰囲気が全然違う。


誰かと待ち合わせ…?


それとも、用事があって出掛けてきたとか…?


紅月くんに声を掛けようかどうしようか迷っていた時だった。



「玲音!」


突然、どこからか聞こえてきた男の子の声。


ビックリした私は、咄嗟に近くにあった銀杏の木の後ろに隠れた。