私は今しがた食べようとしていたおにぎりを、一旦、コンビニの袋の中に押し込んだ。

あーあ、食欲失せた。
この状況で、おにぎりなんか虚しくて食べられるか。

「なーなーみーさーん」

そこで馬鹿みたいに明るい声が聞こえて、内蔵が出そうなほど大きな溜息が出る。

入社二年目の後輩、ミウラくんだ。
部署は違うけど、飲み会がきっかけで話すようになってから、何故か気に入られている。

「七海さん~隣良いですか?」
「イヤ」
「そんなこと言わずに」
「私、今、猛烈に、気分が悪いの。苛つくから話しかけないでくれる?」
「そんなに睨まないでください~美人な顔が台無しですよ」

ミウラくんはそう言いながら、小さな手提げカバンからいそいそと、お弁当と思しきタッパーを取り出した。

って、おい、ナチュラルに隣座ってんじゃないわよ!

「七海さんって、ホント歳の割りに、綺麗ですよね~!」

コイツ……歳の割りに、ってのが余計だわ!
こちとら日々衰えゆく「美」を維持するために、並々ならぬ努力してんのよ!!

「目が大きくて美人だし、小顔だし、9等身だし、お肌ツヤツヤだし……」

まぁここまで褒められると悪い気はしないけどね。

しかし、ミウラくんはヘラヘラ笑いながらこう続けた。



「いやぁ~! こんなに綺麗なのに、どうして結婚出来ないんですかね?」