+ヴァンパイア執事+

傷口に残るわずかさえも丹念に舐め取ったバフィが、やがて私から離れる。

「どう、私の血は」

訊ねると、彼は恭しく一礼、こうべを垂れした。

「最高級に、ございます」

「ふ、当然。――この血がほしかったら、これからも誠心誠意、私に仕えなさい」

「はい、もちろん」

さらに深く一礼する、彼の背後で、

「ん……」

「あら、お目覚め?」

堀内が、起き上がった。

記憶を消去されたせいか、目がうつろだ。

が、バフィを映した瞳は一瞬一気、覚醒し、見開かれた。

「ばばば、バフィさまっ!!」

彼女の手が、バフィの手を握る。

「はははははじめまして! あの私っ、バフィ・ディスカル・ルックンデルト・ヴァン・ピ・アンさまファンクラブ、会員ナンバー0043の堀内っていいますっ! おおおおお逢いできて光栄感激ですっ!」

そのまま、さっきみたいな口上を一気にまくし立てる堀内。

私は密かに苦笑した。

「バフィ、ファンクラブだってさ」

「は、はあ……」

私の執事はただ、ポカンとしているばかりだった。