+ヴァンパイア執事+

がしりと、バフィに肩を捕まれる堀内に、

「私はね、バフィの飼い主であり、ご主人様であり、お嬢様よ。そして――」

ぐ、と制服の襟、首筋をさらけ出してやった。

「彼の大事な、エサなのよ」

堀内はそこに、二つの穴が空いているのを見ただろう。

そう、バフィの鋭い牙が刺さった、傷跡を。

堀内が声を張り上げるより速く、バフィの目が一瞬、赤く光った。

それはフラッシュのように堀内の眼球を直撃し――

記憶を、消去した。

意識を失った堀内が、くたりと廊下に倒れる。

「お嬢様」

「うん?」

「だいたい、お嬢様への恨みを抱いた頃から部分的に記憶を消去しました。これで問題はないかと」

立ち上がったバフィの報告に、うなずく。

「よくやったわ、バフィ」

「ありがとうございます。――ところでお嬢様」

そして彼の目がなにを見ているか、すぐに悟る。

「はいはい。あげるわよ、私の血を」

直後、私は彼に、抱きすくめられていた。