今日はかなり晴れた空で、私を元気づけようとしているようだった。

赤坂と離れてから二週間が経った。

あれからはずっと教室で昼を過ごしたし、すれ違った時も気づかないふりをした。

でもやっぱりどこか淋しくて、何か足りない気がした。

私を変えてくれた人は誰だっけ。

私を支えてくれた人は誰だっけ。

そう考えてみても、やっぱりこのまま終わっちゃいけないなって思ったんだ。

だから、今日は私から謝りに行く。

本当に自分勝手だよね。

あんなに怒って雪玉投げつけて、一人で泣きながらバカって叫びまくって。本当に自分勝手。

こんな私、許してくれるかわからないけど、謝らなきゃもう元に戻れない気がするから。

「実華先輩!」

校門のそばに来たところで、背後から慌てる愛佳の声が聞こえた。

愛佳とも、面と向かって話すのが不安だった。

私のこと怒ってないかな。私のこと恨んでないかな……

「私、決めました。もう二度と、赤坂先輩の前に姿を現しません!」

それはかなり思い切った告白だった。

あんなに好きだと言っていたのに……

「それでいいの?」

だって、そんなの普通に考えて難しいし……

「いいんです。私には"勇気"がありますから」

愛佳は自慢げに笑った。

そうだったね。愛佳には勇気があるんだ。

でも、それを手に入れるために、とても辛いことをさせてしまったんだよね。それに、私のせいでそうなっちゃったんだし……

「ねぇ愛佳。私、本音が聞きたいよ。どんなことでもいいから、本音を話して」

すると、愛佳は眉間にシワを寄せて強ばった表情を見せた。

「本音を言うとですね。私すっごく腹が立ちました。だって、好きな人の好きな人が隣で応援してるんですよ?イライラしますよね」

確かにそうだ。

「応援してる」とか言っておきながら、私は裏切ったも同然のことをしてしまったみたい。

「だけど、私は実華先輩のこと恨んだりなんかしません。だって実華先輩のことが大好きなんですもの!」

さっきとは真逆に、とても優しい表情を見せる愛佳。

その表情は、いつものあの笑顔で、私の心を癒してくれる。

「ありがとう、愛佳」
「あ、あと!」

愛佳は何かを思い出したのか、バッグをゴソゴソと探り始めた。

「これです!」

渡されたのは、小さなキーホルダーだった。

「お守りです!『受験上手くいきますように』っていう気持ちも込めて作りました!」

手作りのお守り……そんなの誰にも作ってもらったことがなかった。

それは、今流行りのUVレジンで作られたもので、とてもかわいらしいものだった。

薄桃色のレジン液の中には、ひとつの四つ葉のクローバーが入っていた。

「嬉しい!ありがとう。絶対合格してみせるからね」

愛佳は、うんうん、と頷いてニッコリ笑って見せた。

「あ、赤坂先輩ですよ」

いきなりコソッと耳元で囁かれて、思わずびっくりしてしまった。

校門から生徒玄関までのところに、かなり長い坂がある。その坂を歩く生徒の中に、赤坂は紛れていた。

緊張してきた時に、愛佳がギュッと手を握ってくれた。

そして何も言わずに微笑んだ。

──よし

「行ってくる」
「行ってらっしゃい」

愛佳が強く握ってくれた手が、私に勇気を与えてくれた気がした。