【桜井実華】
「桜井!」

生徒玄関で愛佳を待っていると、まさかの赤坂がやってきたんだ。

「なんで来るの」
「もう一度話したくて」
「来ないでって言ったでしょ」
「でも」
「来ないで!」

思わず出てしまった大声は、校内中に響き渡った。

赤坂も目を丸くして驚いていた。

「愛佳はどこよ……まさか」
「アイツは屋上だ」

どうしてそうなるの?なんで愛佳の気持ちがわからないの?

「愛佳は、あんたのことずーっと想ってたんだよ?今日の日を楽しみにしていて、いつもあんたとしゃべる度に私に報告しに来てた。あの子の気持ち、一つもわかってあげられないの!?」

そこまでバカだとは思ってなかった。

愛佳の気持ちには、気づいてあげられると思っていた。

本当にコイツは……

「俺はお前が好きなんだ!」

──バンッ

外に積もっていた雪で、雪玉を作って、思いっきり当ててやった。

「バカ!バーカ!バーカ!」

何度も投げつけた。

痛がっていても、何度も何度も投げつける。

どうしてなの!ありえない!

次第に力が入らなくなって、その場に崩れ落ちてしまった。

「私とあんたは"ライバル"じゃないの?私はずっとそのつもりでいた。確かに特別な存在だったよ?だけど恋愛対象なんかじゃない。そんなの特別な存在なんて言わない」

よくわからない涙が止まらない。

いつも慰めてくれるのは赤坂で、いつも慰めるのは私だった。

お互いに助け合って、ずっとそばにいて離れなくて、そういう特別な存在だって思ってた。

だから恋愛対象に見られてたなんて、すごく残念だし、気持ち悪いし、イライラするし。

「……」

もうこうなってしまえば終わりなのかもしれない。

お互い離れるべきなのかもしれない。

すっごく腹が立って、嫌になってきたけど、だけどこのままで終わりを迎えるのは絶対に嫌だった。