外への扉を開けると、もう日も暮れて薄っすら暗くなり始めている。

車の助手席に日野を乗せると「ふぁ~うぅぅぃういい」と腕を上に思い切り伸ばしながら日野が目を覚ました。

宮部はエンジンをかけながら「ようやく起きたか。バカタレ。」と言うと日野は状況が飲み込めないのか辺りをキョロキョロ見回している。

「あれ?なんで私ここにいるんですか?それに宮部さんもなんで?」

「日野君なんも覚えてないの?」

日野は必死に思い出そうとしているようだが、飲みすぎて居酒屋で寝てしまった記憶しかないようだ。


宮部は呆れた顔をしながら「幸せもんだな。」と皮肉めいた言葉を吐いた。


日野にとっては攫われたという自覚はまったくないのだろう。


「とりあえず、今から鉄っちゃんの所に行くからシートベルトをしろ。」


日野は渋々シートベルトをすると、隣に停まっている赤い軽自動車に気付いた。


「あれ?めぐみさんの車が隣にあるけどどうして?」


宮部は説明するのがめんどくさくなったのか「鉄っちゃんの所で説明するから黙って寝てろ。」と言うと、日野は頬を膨らませながら「は~い」と呟いた。