大きく羽を広げた鳥のイラストが描かれた便箋を手に、宮崎は床に寝転んでいた。

目の前にあるテーブルの上には宿題のワークが広げてあって、つい先ほど投げ出したシャープペンシルがコロコロとその上を転がっている。

エアコンのない二階の部屋は、窓を全開にしてついでにドアも全開で、扇風機を回して何とか風を取り込んではいるが、それでも嫌になるほど蒸し暑い。

その暑さのせいで宿題は一向にはかどらず、三十分ごとにフローリングの床に寝そべっては、冷たい場所を求めて転がっていた。

そんな時


「みーやざーきくんっ!あっそびーましょ!!」


外から、セミの大合唱をも凌駕する勢いで、小学生のような誘い文句が聞こえた。

今時そんなセリフを大声で叫べる人を、宮崎は一人しか知らない。

そしてその人物は、おそらくこうして宮崎が息を潜めて居留守を決め込んでも、ずかずかと家に上がり込んでくるような図太い神経の持ち主でもあった。


「おっじゃまっしまーす!」


案の定、鍵のかかっていない玄関がすんなり開く音がして、何の迷いもなく足音は階段を上がってくる。