一頻り匂いを嗅いで満足したのか、若様は興味を示した時と同様、不意に興味を失った。

立ち上がってふるふると体を振ると、抜け落ちた毛が舞う。

まるでたんぽぽの綿毛のように、若様の毛はふわりと風に乗った。

微風にふわふわと舞い上がる毛の行方を追いつつ、宮崎はポツリと口を開く。


「和果子は、いつまでこっちにいられるんだ?」


同じように視線を上げていた和果子が、そのままの体制で答えを返す。


「休みが終わるギリギリまでいるつもりだけど、宮崎は?」

「俺も同じくらいかな」


宮崎は、立ち上がって膝についた土埃を払う。

ふーん…と気のない相槌を打っていた和果子は、若様同様、宮崎の後ろポケットでひらつく物に視線を止めた。


「それって……日向さんから?」


ポケットの上から手紙にそっと手を触れて、宮崎は顔を上げて頷く。


「今のところ、また帰ってこられないらしい」


残念そうに呟く宮崎に、返事をするでも相槌を打つでもなく、和果子は黙って手紙を見つめる。