明らかに柚花を気遣って、和果子は高知が盛り上げた肉の皿に箸を伸ばす。

一体その胃袋はどうなっているのかと、呆れ顔で和果子を見やった宮崎の横で、高知は明らかに今までより嬉しそうに追加の肉を焼いていた。

そんな高知を、柚花が少しだけ寂しそうに見つめる。


「あ、あの……わたし、何か飲み物取ってきます。みなさん、何がいいですか」


花柄のワンピースがひらりと揺れて、三つの視線がそこに吸い寄せられる。


「俺は、まだあるから大丈夫だよ」

「あたしも。あっ、高知先輩のは空じゃないですか?」

「あ、うん。でも、何だか悪いな。ゆずちゃんに持ってきてもらうなんて」


「いつもはそんなこと言わないくせに」とぼそっと呟いた宮崎を、「何か言ったかな?」と高知が不気味な笑みをたたえて見やる。

二人の間で、そんな静かな戦いが繰り広げられている事など露知らず、柚花ははにかむように笑った。


「高知さんは……何がいいですか?お肉の一番美味しいところをくれたお礼です。遠慮しないでください」


宮崎を肘で小突くのを止めた高知が、ほんの少し恥ずかしそうに頬をピンクに染めた柚花に視線を移す。