「いや……やっぱいいや」
頭の中に、お祭りの時の和果子の浴衣姿が浮かび上がる。
いつもとは違うその雰囲気に、友達とはいえドキドキさせられたのは事実で、それを思い出せば、多少なりとも異性としての意識が芽生える。
昔ならそのままの流れで、何てことなく受け取ってしまえた紙コップだが、今は恥ずかしさが先に立って、宮崎は咄嗟に出してしまった手を引っ込めた。
いつもとは若干様子が違う宮崎に、和果子は不思議そうに首を傾げる。
その視線から逃れるように、宮崎はコーラをグイっと煽った。
強い炭酸が舌の上で弾けて、独特の甘さが口の中に広がる。
ふう…と息をついてカップを横に置くと、賑やかな校庭をぐるりと見渡した。
「思ってたより、少ないな……」
ポツリと呟かれた言葉に、和果子も宮崎の視線を追いかけるようにして、目の前の景色を見やる。



