初めて会った時、ランドセルを背負っていたあの子は、道端に咲いた野花をジッと見つめ、不意に顔をあげて恥ずかしそうに笑った。

その可愛らしい笑顔を見た瞬間、あの子の事が好きになった。

言ってみれば、一目惚れだった。

でもあの子の視線はいつだって、隣に立つ同じ年の彼に注がれていることには、とっくの昔に気がついていた。

愛おしそうな、でも切なそうなその瞳。

後輩である彼の事も、もちろんかわいく思っていた。

けれど同時に、憎らしくもあった。

あの子の視線を独占している彼が、それなのにそのことに気がついていない彼が、どうしようもなく……。

なぜオレではダメなのか、どうしても彼でなければならないのか。

何度も何度も考えて、考えるたびに不毛すぎて笑えた。

答えなんて、最初からよくわかっている。

オレにとって、愛おしい存在があの子であるように。

あの子にとって、愛おしい存在は彼なのだ。