今年の夏もキミを想う…。


どこか得意げな高知を睨みつけて息を整えていると、後ろからカラコロと和果子の足音が聞こえてくる。

そのカラコロが坂道に差し掛かって、まるで転がるように勢いを増す音に、その場から避難しようとした宮崎は、一足遅く後ろから和果子の体当たりをくらって、再び腹部を強打した。


「痛っ……!?」

「はあ、足が、取れるかと、思った……。何、あの坂……怖すぎる」


ぐったりと背中に寄りかかる和果子に、二人分の体重を受け止めているガードレールが嫌な音を立てる。


「おいこら……ふざけるなよ、和果子」


再び襲いかかった腹部の痛みをこらえ、絞り出すように発した宮崎の声に、「ああ、ごめん」と和果子が寄りかかっていた体を離す。

ほんの少し寂しそうな表情でそれを眺めていた高知は、途端にパッと表情を変え、さりげなく和果子の手を引いて役場が正面に見える位置まで誘導した。


「ここがね、一番よく見えるんだよ。ほら、あそこに役場があるでしょ。あそこの裏手で打ち上げるから、この位置だと正面に花火が見えるんだ」