星が散らされた模様の便箋をポケットに、宮崎はまだ青い空を見上げる。

時刻は既に夕方だが、夏の空はまだまだ明るい。

のんびりと自転車を走らせていた宮崎の耳にも、先ほどから遠く賑やかな音が聞こえてきていた。

天気予報通り、快晴で迎えた祭り当日。


「せめて祭りの日だけでも、帰ってくればな……」


どうにもならないことをボヤきながら、僅かに視線を上げて、ゆったりと雲が流れていく様子を眺める。

村が夕焼けに染まる頃に始まって、空が白み始めるまで提灯に明かりが灯り続けるこの夏祭りは、年に一度の村の一大イベント。

人口は年々減少の一途を辿り、そのほとんども老人であるはずのこの村に、どこから現れるのか、唯一若者が溢れ活気に満ちる日でもある。

勉強の息抜きにと、あてもなく自転車を走らせていた宮崎も、開始の合図が空に打ち上がるのを、今か今かと待ちわびていた。