小学三年生の時、“町からやって来たから”なんてくだらない理由でいじめられていた転校生を、全力でかばってクラスメイトと戦っていた姿を見てから、彼の事が好きになった。

普段は何事にもやる気がなさそうに見せかけて、実は正義感が強くて熱いその姿に、胸が高鳴って、目が離せなくなった。

けれどその時から、彼の心が誰に向いているかなんて、既に薄々気がついていた。

見つめれば見つめるほどに、彼の視線の先にいる存在を、認識せずにはいられなかった。

いつだって、彼の視線の先にいたのは彼女で、彼の心を独り占めしていたのも彼女。

その晴れやかで、朗らかな笑顔が……どうしようもなく、苦手だった。

なぜあたしではないのか、どうして彼女でなければならないのか。

不毛な問いが、頭の中をぐるぐると回る。

答えなんて、誰に聞かずとも、自分が一番よくわかっている。

あたしの中で、彼という存在がどうしようもなく大きくて、大切で、愛おしいのと同じように。

彼の中では彼女が、どうしようもなく大きくて、大切で、愛おしい存在なのだ。