「母さん、遅いな……」


誰もいないバス停で、迎えを待つこと早三十分。

ジーパンのポケットから取り出した携帯で時間を確認すると、間もなく四十分が過ぎようとしていた。


「あっつい……」


額に浮いた汗を片手で拭って、今日の空によく似た、水色に白い雲の便箋を顔の前に掲げる。

携帯のメールでは伝わらない、手紙だからこその手書きの温かさがそこにはある。

所々に現れた癖をなぞるように、そっと文字に指を滑らせた。

次に封筒と持ち替えて、そちらもじっくりと眺める。

差出人の名前が記された部分をぼんやり見つめていると、握りしめていた携帯がブルブルと震えた。