「こんな可愛い手紙をもらっちゃったら、帰らないわけには行かないよね」


ポツリと呟くと、風が彼女の髪を揺らした。

夏の名残を含みつつ、どこか秋の香りがする風。


「うん、決めた。前から決めていたけど、また改めて決めた。次の夏は絶対に、何がなんでも、誰が阻んでも、帰ることにする!」


彼女はベンチから立ち上がって、拳を胸元でぎゅっと握って宣言する。

その勇ましい姿を、男は可笑しそうに笑って眺めた。

顔を上げれば、青い空に、飛行機が雲を引いて飛んでいくのが見える。


「飛行機と、あとバスを乗り継いで行かないといけないから、予約しないとね」

「今からか?流石にそれは早すぎるんじゃ……」

「じゃあ明日にする」

「明日も今日も変わらないだろ」


いてもたってもいられない様子の彼女を、男は笑って諌める。

一瞬だけムスっと頬を膨らませた彼女だが、しかし直ぐにぱあっと笑顔になって、男に顔を近づけた。