「手紙か?なつ」

「うん、お手紙」


きっちりとした丁寧な字が並んだ、飛行機が雲を引いて飛んでいくイラストが描かれた便箋を手に、彼女は声のした方に顔を向ける。

男がひとり、立っていた。


「なつもいい加減、文明の利器に頼ったらどうだ?手紙よりメールの方が届くのも断然早いし、なんなら電話だってできるぞ」

「電話なら、家にある電話機からだってできるし。電子な文字は、気持ちがわかりづらいから苦手なの」


可笑しそうに笑った男は、すとんと彼女の隣に腰を下ろす。

大きく枝葉を広げた木が、程よい木陰を作り出すベンチに、二人は並んで座っていた。

目の前には小川が流れていて、陽光が反射してキラキラと輝いている。

犬を連れた老人や、ランニング中の若者が、自分のペースで通り過ぎていくのを、二人はのんびりと眺める。