「柚花」


名前を呼ばれて振り返れば、何かが放物線を描いて自分の方に飛んできていた。


「うわあっ」


顔面にぶつかる寸前でキャッチしたそれは、ひんやり冷たいスポーツ飲料のペットボトル。


「休憩終わったらランニングだって。だからその前に、しっかり休んで水分取れってさ」

「ありがとう」


タオルを首から下げた友人が、同じペットボトルを手に隣に腰を下ろす。

合宿場の近くにある体育館には、他にも見たことのないジャージや練習着を着た他校の生徒達がちらほらと練習に励んでいた。


「柚花さ、今度の試合には彼氏呼ぶの?」

「か、彼氏!?彼氏なんてそんな……大それた人は、いま……せん」

「えっ?だって合宿中何度も、スマホの写真見てニヤニヤしてたじゃん。あれ、写ってた男の人彼氏じゃないの?」

「み、見たの……!!?」