そんなわざとらしい友人に構うことなく、高知はポケットからスマートフォンを取り出してそっと電源ボタンに触れた。

パッと明るくなった画面には、先ほど慌てていてそのままにしてしまった、和果子の電話番号が表示される。


「お前ってさ、案外意気地なしな」


慌てて横に視線を向ければ、いつの間にか友人が一緒になって画面を覗き込んでいた。

ニヤニヤといつもの調子でバカにしてくるかと思いきや、思いがけず真剣な顔がそこにあって、高知は僅かに戸惑った。


「男ならさ、どーんとぶつかってけよ!どーんと。んで、押して押して押しまくって、それでもダメなら一旦引く。これで女の子って落ちるらしいぞ?」


「この間、“モテ男の恋愛テク全部教えます”って番組で言ってた」と語る友人は、真面目に言っているのか、それともやはりバカにしているのか、よくわからないままにそのアドバイスを聞いていた高知は、ついに堪えきれなくなって吹き出した。


「その番組、最後にゲストで出てたアイドルが、“でも結局は、何するにしても顔ですよね”って締めてたの知ってる?」

「くっ……!やっぱ結局顔か!!」


悔しげな友人の声を隣で聞きながら、高知は通り過ぎざまに廊下の窓から空を見上げた。