「おーい高知、飯食いに行こうぜ」

「ん?ああ、うん。今行く」


友人の声に、我に返った高知は慌ててスマートフォンをポケットにしまい、立ち上がる。


「なんだよお前、彼女にメールでもしてた?」

「違うっての。その顔やめろ」


ニヤニヤと茶化してくる友人をかわしながら、二人並んで講義室を出る。


「あーあ……でもせっかくの夏休みだってのに、彼女どころか、女の子と遊びに行く予定もなく、おバカな奴らと机並べて特別講義なんて……悲しすぎるわ、おれの夏休み」

「お前もおバカだから机並べてるんだろ」


くだらない話で盛り上がりながら、まだ休み中で人の少ない校内を歩く。


「まあでも、お前はいいよな。地元帰れば、仲良しのお友達がいるわけだろ?しかも女の子の」


思わずパッと浮かんだ和果子の顔に、高知の耳が僅かに赤らむ。


「あーあ、おれも地元に可愛い女の子のお友達が欲しいなー」

「地元って……実家すぐそこのくせに」


唐突に明後日の方向を向いて下手くそな口笛を吹き出した友人が、「昼飯は何がいいかなー」などとわざとらしく話題をそらす。