「よし。じゃあ、スタートの合図はあたしがする」
「はあ?それって何かずるくな……」
「スタート!」
宮崎の言葉にほとんど被せるようにして、和果子の明るい声が響く。
「おい、今のはずるいだろ!」
慌てて箸を水の流れる竹に差し込んだ宮崎だが、最初のそうめんは、既に和果子のお椀の中にあった。
「へっへーんだ」
「こんの……次は絶対負けない」
水に乗って次々と流れてくるそうめんを、二人は賑やかな声を上げながら取り合う。
テンポよく流れてくるそうめんは、結局一度も準備したザルに落ちることなく、ただ一緒に流した水だけが、涼しげな音を立ててバケツの中に落ちていった。
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